お餅を食べると幸福になる

あさせの独り言

お餅を食べられるという“ささやかな幸福”の話

今年も残すところあとわずか。街の雰囲気も少しずつ年末らしくなってきて、お正月の気配を感じるようになりました。
お正月といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?
私は真っ先に“お雑煮”です。

うちのお雑煮は母の実家・東北仕込み。ぜんまいなど山の恵みが入っていて、毎年これを食べないと新しい年が始まった気がしないんですよね。

…と、そんなお雑煮に欠かせないのが“お餅”。
今日はそのお餅にまつわる、少しだけ胸に残ったエピソードのお話です。

病院で交わされた、ハロウィン前日の何気ない会話

私はリハビリが必要な高齢の方が多く入院している病院で働いています。
その日、リハビリの先生と患者様が楽しそうに話しているのが聞こえてきました。

「明日はハロウィンの食事が出るそうですよ」
「まぁ、楽しみねぇ。どんな料理かしら」
「たぶんカボチャ料理でしょうね。あとは当日のお楽しみです」

そこまではよくある会話。ところが話題はお正月へ。

「お正月も、おせちが出るのかしら」
「例年通りなら、少しだけ出ると思いますよ」
「じゃあ……お餅は出るのかしら?」

その瞬間、先生が笑いながら言いました。
「お餅が出たら病院、大パニックですよ」

私も横で聞いていて、思わず吹き出してしまいました。
確かにその通りで、飲み込むのが難しい方も多い中、もしお餅なんて出したら……救急車どころじゃすまない未来が見える。

でも、患者様はぽつんと一言。

「私、お餅好きなんだけど……残念ねぇ」

その顔が、今でも忘れられません。

“笑ってしまった自分”への後悔と気づき

後からじわじわ胸が痛くなりました。
「きっとこの方は、もう一生お餅を食べることはないのかもしれない」
そう思うと、さっき笑ってしまった自分が急に恥ずかしくなったのです。

私は食べることが好きです。
“食べたい時に、食べたいものを食べられる”。

たぶんこれは、想像以上に大きな幸福なんですよね。
当たり前だと思っていたけれど、当たり前じゃない。

だから私は、お餅を食べるたびに思い出そうと思います。
「この幸福は永遠ではないんだぞ」
「最高は、時に最悪へ変わることもあるのだぞ」 と。

お餅を食べられるという幸福

今回のお話は、
「餅を食べたら幸福になる」ではなく、
「餅を食べられること自体が幸福なのだ」

という気づきでした。

あの患者様は、最後にお餅を食べられたのはいつだったのだろう。

そんなことを考えながら、私は今年もお雑煮を楽しみにしています。

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